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福岡地方裁判所小倉支部 昭和61年(ヨ)286号 決定 1987年11月30日

申請人

福原猛光

右訴訟代理人弁護士

西山陽雄

塙秀二

市丸信敏

被申請人

学校法人福原学園

右代表者理事

松尾四郎

右訴訟代理人弁護士

村上三政

井上繁行

吉原英之

主文

本件申請をいずれも却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  申請人

1  申請人が被申請人の設置する九州共立大学八幡西高等学校(以下「西高校」という。)の校長たる地位及び被申請人の教職員たる地位にあることを仮に定める。

2  被申請人は、申請人が行なう前項記載の校長としての職務を妨害してはならない。

3  被申請人は申請人に対し、昭和六一年五月以降本案判決確定に至るまで、毎月二五日限り一箇月金六〇万六〇〇〇円を仮に支払え。

二  被申請人

主文と同旨

第二当事者の主張

一  申請の理由

1  当事者

(一) 被申請人は、昭和二二年、申請人の養父である福原軍造(以下「軍造」という。)が、福原高等学院(女子部)として創設した学校法人であり、現在、西高校のほか、九州共立大学、九州女子大学、九州女子短期大学、九州女子大学付属高等学校(以下「付属高校」という。)その他の各教育機関を擁している。

(二) 西高校は、福原高等学院を前身とし、昭和二四年福原高等学校と改称、昭和二六年男子部増設、昭和三〇年八幡西高等学校と改称、昭和三七年女子部を分離して、前記九州女子大学付属高等学校を開設し、昭和四一年現在の名称に改称し、男子校として現在に至っている。

(三) 申請人は、昭和四二年四月一日被申請人に雇用され、以後、九州共立大学経済学部講師、被申請人の学園本部主事を経て、昭和五五年四月一日には西高校校長(以下「西高校長」という。)に就任したものである。

2  被保全権利

申請人は、被申請人に対する関係において、雇用契約上の地位のほか、準委任類似の性格の西高校長たる地位を有する。

なお、西高校長たる地位が雇用契約上の地位から独立した法定独立職性を有することは、以下の点から明らかである。

(一) 校長たる職は、法律上、一般職員とは別個の職として定められ(学校教育法七条、五〇条一項)、特に、国公立学校の場合には、校長職への就任につき、「採用」と規定されており(教育公務員特例法一三条)、教員から校長の職に就く場合、校長に新たに採用されるものと解されている。

(二) 被申請人の就業規則等では、一般教員と学長、校長等とが区別して規定されており(就業規則三条、任用規程三条、学長等選考規程)、校長に就業規則の適用がないほか、任用規程に校長についての定めがなく、その任命については学長と同様の規程によるとされていることからすると、校長については、一般教員とは異なり、学長と同様の準委任類似の法的地位を有すると解されていたものと考えられる。

ところが、被申請人は、申請人に対して転任命令を発し、更には申請人を懲戒解雇に処したとして、以後、申請人の西高校長たる地位及び被申請人における教職員たる地位をいずれも争う。

3  保全の必要性

申請人は、後記解雇まで、西高校長として、被申請人から月額金六〇万六〇〇〇円の給与の支給を受けていたが、他には何らめぼしい収入の途がなく、その生計の維持は、被申請人からの給与に依存せざるを得ない状況にある。

また、申請人は、西高校長として教育現場における枢要な地位を保有しており、その職務を通じて、教育者としての自己の教学理念を実現する固有の利益を有し、しかも、被申請人は、有無をいわせぬ手続で一方的に、被申請人の創立者である福原軍造の養子でもある申請人の名誉、信用を著しく傷つけ、損害を与えている。

よって、申請人は、被申請人に対して地位確認等を求める訴訟を提起しているが、本案判決を待っていたのでは回復しがたい損害を被るので、その権利の保全のため、申請の趣旨掲記の裁判を求める。

二  申請の理由に対する認否

1  申請の理由1の事実は認める。

2  同2の主張はすべて争う。

処分前の申請人の地位は雇用契約上の地位にとどまり、校長への任命は、雇用契約上の地位に基づく補職に過ぎない。

3  同3のうち、申請人は、後記解雇まで、西高校長として、被申請人から月額金六〇万六〇〇〇円の給与の支給を受けていたことは認め、その余の主張はすべて争う。

三  抗弁

1  転任命令

(一) 被申請人は、昭和六一年四月一九日開催の理事会において、同月末日退職する付属高校校長(以下「付属高校長」という。)の新川幸生の後任に申請人を充て、西高校長の後任には、公立高校長の経験を有する主静雄を採用してこれに充てることを決定し、申請人に対して、同月二四日、右決定を伝え、同年五月一日、就業規則五条及び職務規程一四条に基づき、西高校長を免じ付属高校長を命じる旨の辞令を交付した(以下「本件転任命令」という。)。

(二) 申請人を付属高校長に選考した理由は、次のとおりである。

(1) 付属高校長の選考対象者は、申請人と主静雄とされていたところ、同高校では、

芦屋基地の航空機騒音に対処するための妨音工事が予定されており、新校長には、

右工事の円滑な運営が期待されるところ、私学の経験のない主静雄に初めての私学運営に併せて右工事実施を負担させるには相当の無理があり、西高校長として同種工事施行の経験を有する申請人が適任であった。

(2) 被申請人は、昭和五九年一二月一九日、文部省から、昭和五一年以来の学生数の過少報告、国庫補助金の不正受給納付金等の簿外処理を指摘され、学園の運営体制の刷新・適正化、経理の適正処理・学生数の適正報告等の指導を受けるに至り、これに伴い、旧理事会は昭和六〇年三月三一日付をもって全員辞任し、同年四月一日には、現在の理事が就任して、以後、学園運営刷新のため、経営の明確化、社会的評価の向上に向けて努力の途上にある。

そうした中、申請人は、六年間という長期間にわたって西高校長に在職し、勤務態度にも緊張を欠く傾向があったことから、被申請人の学園運営刷新のため、校長人事の異動により心機一転を図る必要があった。

2  懲戒解雇

(一) 被申請人は、昭和六一年六月二八日開催の理事会において、申請人を懲戒解雇する旨決定し、同年七月一九日、申請人に対して、同日付で懲戒解雇する旨の辞令を交付した(以下「本件解雇」という。)。

(二) 本件解雇に至る経緯

被申請人は、申請人に対し、本件転任命令の辞令交付に先立ち、理事長である松尾四郎から異動の趣旨及び理由を説明し、同年五月二日、付属高校の片山正敏副校長が同高校長への就任方を要請し、同高校の白石淳事務長が右就任及び事務書類の決裁を求め、同月三日にも同事務長が、同月五日には被申請人秋吉幸男事務局長がそれぞれ右就任方を説得したが、申請人は、これらをすべて拒否した。そこで、被申請人は、同月六日、申請人に対し、業務に支障を来たすことを理由に、直ちに就任することを命じる業務命令を発し、同命令書を交付するとともに、再度、右就任方を要請した。

ところが、申請人は、付属高校に着任しないばかりか、依然として西高校長であるかの如く同高校の校長室への出勤を続け、そのため、同月一五日着任した主新校長が執務する場所のない状態となった。その後も、申請人による右校長室の占拠状態は、被申請人からの度々の退去要請にもかかわらず同月二三日まで続き、被申請人がやむなく同室を施錠した後も、同高校教員室の校長用机に着席して、主校長の執務を妨害するに至った。

(三) 本件解雇の手続

(1) 被申請人における職員に対する懲戒手続は、次のとおりである。すなわち、理事会から諮問を受けた懲戒委員会は、制裁規程に基づき、その相当処分を議決して、理事会及び人事委員会に内申し、右内申を受けた人事委員会は、これを審議して、理事会に答申し、これらを受けて、理事会が懲戒処分を決定する。

(2) 本件においては、昭和六一年五月二三日、理事会が申請人を懲戒委員会の審議に対することを決定し、同年六月二日、同委員会に対して諮問に付し、同日、懲戒委員会が審議を開始して、同月一二日、理事会に対し、懲戒決定に至るまで制裁規程一二条に基づく必要な措置を講じるべきことを内容とする中問答申を行ない、これを受けて、理事会は、同月一六日、申請人の付属高校としての職務就業を停止する措置を講じた。

次いで、同月二一日、同委員会は、理事会及び人事委員会に対し、申請人を後記懲戒事由に基づく懲戒解雇を相当とする旨の内申を行ない、これを受けた人事委員会は、同月二四日、懲戒委員会の右内申につき、特に付するべき意見はない旨答申した。これらを受けて、理事会が本件解雇を行なうに至ったものである。

(3) 本件解雇に至る手続において、懲戒委員会は、同月七日、申請人に対し、文書をもって、それまでの申請人の行為が同委員会の審議の対象となったことを告知し、かつ、これに対する顛末を申し立てるよう弁明の機会を与えた。その結果、申請人から顛末書(<証拠略>)が提出され、これも審理内容に取り入れて十分な審議を行なった。

(四) 本件解雇の解雇理由

申請人は、<1>付属高校長に命じる旨の被申請人の命令に従わず、かつ、<2>なおも西高校長であると主張し、同高校の校長室に入室してこれを占拠しあるいは教員室内の校長用机に着席して、被申請人からの退去要請にも応じようとせず、被申請人の業務及び新たに着任した主新校長の業務を妨害したものであり、右の各行為は、制裁規程七条一号(故なく学園の業務上の指示、命令に服従せず、又は学園の秩序を乱した)及び一四号(故意に学園の業務又は他人の業務を妨げ、又は妨げようとした)に該当する。

また、申請人は、被申請人のキャンパス内に所有する土地(被申請人学園の通用門及び駐車場用地)につき、本件転任命令発令後の昭和六一年五月二八日、債権額二億五〇〇〇万円の抵当権を設定し、次いで、同月二九日、売買予約を原因とする所有権(共有者全員持分全部)移転請求権仮登記を経由して、関係者に衝撃を与えたことも、事情として加味された。

四  抗弁に対する認否及び申請人の反論

抗弁事実のうち、申請人が顛末書(疎甲第七号証)を懲戒委員会宛に提出したことは認め、その余の点はすべて不知又は争う。

五  再抗弁

1  本件転任命令の違法・無効性について

(一) 西高校長の任期

学長等選考規程によれば、西高校長は本学園教員の中から理事会において選考され(一〇条)、その任期は三年とされている(一一条)。そして、右規定の趣旨は、校長が学校教育における中枢的役割を発揮することを期待し、その教育理念の実現のための活動期間を十分に確保するとともに、その間の処遇を保障しようとしたものである。

現に、申請人は、西高校において、学校運営事項に関する管理者としてだけでなく、教育内的事項につき教育専門職として指導助言者たる職責を担っていた。したがって、右任期中は、被申請人との信頼関係を継続し得ない「やむを得ない事由」が生じた場合を除き、西高校長たる地位の一方的解約は許されないものと解すべきである。

(二) 学校教師の特別身分保障

学校教師は、一般教員であると校長、教頭であるとを問わず、また、国公立学校、私立学校をも問わず、その身分・待遇に特別な保障を要する(教育基本法六条二項)。これは、学校教師が子供達の教育を受ける権利の保障に責任を持つという崇高な使命を十分果たせるよう、その身分や労働条件を一般の労働者以上に保障すべきであるという教育法的要請に基づくものである。そして、校長については、その果たす全校的な教育指導性及び教育専門職性から、その地位は、一般の教師より更に保障されなければならない。

したがって、教師の転任は、原則として、本人の希望又は承諾に基づくことを要し、その意に反する転任は、本人の教育意欲が著しく弱まらないこと、本人及び現任校の計画的教育活動を過度に阻害しないこと、新任校からの強い希望等があること、事前に本人の意見、希望を十分徴して樹立した異動計画であることなどの条件を充たす必要があると解すべきである。

蓋し、学校教育は、教師の人間活動により子供の人間的発達を期するという非営利的職域にあり、ここでは何より教師自身の人間的教育意欲が重要であり、本人の意に反する転任は、教師の意欲を失わせるおそれが極めて強いからである。

(三) 本件転任命令には、次のとおり重大な違法があり、無効といわなければならない。

(1) 任期途中の一方的解約を行なうべき「やむを得ない事由」の不存在

<1> 付属高校における防音工事について

ⅰ 付属高校に防音工事の具体的計画はなく、仮にあったとしても、経営主体である被申請人が自らなすべきことであり、校長の経験、力量で左右される性格のものではない。

ⅱ 西高校の防音工事については、申請人は、校長としてというよりも、被申請人の事務局長として関与したのであり、付属高校の防音工事についても、事務局長等被申請人側の責任者の関与が重要である。

ⅲ 被申請人主張のように、付属高校の防音工事の実施が私立学校の経験のないものにとって相当無理があるというのであれば、校長の選考対象者として私立学校の経験者も加えらるべきであるのに、公立学校の経験しかない主静雄しか予定しなかったことは、申請人を付属高校に転任させることが選考前からの被申請人の既定の方針であることを図らずも露呈するものである。

<2> 人事の刷新について

ⅰ 申請人は、西高校の経営安定のため、入学者の確保を第一の目標として全力を注ぎ、相応の実績を上げてきており、今後は、質の面での充実を期していたのであり、勤務態度に緊張を欠くとは甚だ心外である。

ⅱ 私立学校では、校長の長期的ビジョンの下に学校を運営することによって、私学としての独自性や気風が生まれるのであり、単なる在職年数をもってしては、校長の異動人事の当否は論じられない。

ⅲ いわゆる「学園刷新」が前理事長の下での学生数過少報告問題に起因する運営体制の刷新と同様の意味あいがあるとすれば、従前より被申請人の経営に何ら参画していない申請人に対し、前経営陣の問題で責任をとらせるものであり、全くの筋違いである。

(2) 本件転任命令の学校運営上の阻害性

<1> 学年途中での人事の違法性

本件転任命令は、新学年度が始まって、新たな教育計画等に基づいて学校運営の任に当たっていたさなかに、申請人の希望ないし承諾もないまま突然実施されたものであり、合理的必要性も見出だし難く、その学校運営への悪影響は甚大である。

また仮に、被申請人が新川幸生の高齢を理由に退職させる必要があったとしても、年度内の退職及び転任人事の実施は容易にできたのであり、まさに被申請人の怠慢により年度途中での人事を招いたといわざるを得ない。

<2> 申請人及び西高校の計画的教育活動に対する著しい阻害性

ⅰ 西高校は、申請人が校長に就任した当時、入試受験者数が七〇〇人程度で、定員割れを来たした沈滞状況にあった。そこで、申請人は、受験者を増やし、生徒の質を高め、活力ある学校への再建に腐心し、昭和六一年度も、その指導的関与の下に、習熟度別編成の採用、商業科の充実、生徒の生活指導の徹底、進学・就職の指導体制の強化、進学希望者の文系・理系別指導の徹底等の特色をもって西高校の教育課程を編成して実践し、その結果、ここ数年は、安定的に二千数百人の受験者を獲得することができるようになっていた。

ⅱ しかし、西高校の再建は本件転任命令の時点で完成したものではなく、生徒の質的充実はこれからであり、特に、昭和六四年度以降、高校進学者数の急激な落ち込みが見込まれる中、私立学校にとっては、生徒数の激減の防止が死活問題となっている。そうした中で、申請人は、常に高校進学者激減時に備えた長期的教育ビジョンを練りながら、西高校長の職にまい進してきたものである。

ⅲ こうした状況下における本件転任命令は、これまで順調に立て直しが図られつつあった西高校の教育計画及び申請人自身の西高校における教育計画を全く無視してなされたものであり、その弊害は甚だしい。

<3> 付属高校にとっての不都合

付属高校は女子校であり、普通科、商業科のほか、家庭科、衛生看護科、衛生看護専攻科といった特殊学科を有する。したがって、付属高校長としては、女子教育に通じ、右の特殊学科にも通暁した教師が適任であり、内部昇格人事が最も好ましく、外部から迎える場合にも、十分な準備期間と事前の前任者との連絡・調整が必要である。

ところが、申請人は、女子教育の経験がなく、特殊学科についての予備知識もない。また、突然の転任命令の発令で、十分な準備の時間的余裕もなかった。

<4> 申請人の教育意欲への悪影響

申請人は、西高校長に就任して以来、沈滞気味であった同校を立て直し、発展させんがために、情熱をもって長期的展望を抱き教育に当たってきたものである。ところが、本件転任命令は、申請人の意向を無視し、合理的根拠もなく、弊害ばかり伴うものであり、申請人の教育意欲を著しく減退させることは明らかである。

(四) したがって、本件転任命令は、適法な手続によらない違法・無効なものであるから、申請人は、昭和六一年五月一日以降も、西高校長の地位にあったものといわなければならない。

2  本件解雇の違法・無効性について

(一) 懲戒事由の不存在

(1) 前記のとおり、本件転任命令は違法・無効であるから、これに対する不服従は、何ら懲戒事由とはなり得ない。

(2) 本件転任命令が無効である以上、申請人は、西高校長たる地位にあるから、その職務を執るのは職務上の義務であり、現に、平穏に従前どおりの勤務をなし、履行の提供をしたに過ぎないのであり、何ら業務妨害行為呼ばわりされるべきものではない。また、仮に、被申請人等の業務を妨げる面があったとしても、事実上の二人校長という事態は、被申請人の不手際により生じたものであり、その解消は、被申請人側の適法な処理によりなされるべきものである。

ちなみに、西高校での校長の事務処理は、昭和六一年五月一日以降、被申請人の本部ないしその前面にある女子大応接室において、主静雄により事実上行なわれており、これについて何らの妨害や混乱も生じていない。かえって、申請人を実力で排除し、学園の混乱を招いたのは、被申請人自身である。

(3) キャンパス内の所有地への抵当権設定登記等の経由については、懲戒処分の審理において考慮の対象とされたことも申請人には知らされず、また、申請人の弁明を徴することもなかったのであり、このような事情まで懲戒処分において考慮されていたことは、本件解雇の不明朗さを象徴的に物語るものである。

(二) 本件解雇の手続上の違法性

本件解雇は、「制裁規程第七条により懲戒解雇する」とのみ記載した辞令書の送付により行なわれ、処分の理由が何ら明らかにされておらず、申請人からの不服申立ての途を封じるものである。また、被申請人は、本件解雇手続において、申請人に対し、前記懲戒事由のうち業務妨害行為については何ら告知・弁明の機会を与えていない。

したがって、本件解雇には、懲戒事由を明らかにせず、かつ、懲戒事由について、告知・弁明の機会を与えないという手続上の極めて重大な瑕疵がある。

(三) よって、本件解雇は、懲戒事由を欠くとともに、手続上の重大な瑕疵を伴うものであり、無効といわざるを得ない。

六  再抗弁に対する認否及び被申請人の反論

1(一)  再抗弁1の(一)のうち、申請人主張の学長等選考規程の存在は認め、その余の主張はすべて争う。

(1) 右規定は存在するものの、従前、同規程における任期等の定めはすべて無視され、全く機能していなかった。

(2) また、同規程は、学長等の選考手続及び任期に関する規定のみで構成され、解任、退任、地位の変動及び保障、職務の内容等に関する規定を有しない。したがって、これは、学長等の選考・任命に当たり、理事会の専断を防止し、被申請人の目的に副う公正妥当な任命を確保するために、被申請人と選考権者・任命権者との関係を規制する規程であり、被用者と被申請人との関係を規律する就業規則等とは異なり、被用者の地位に関する保障機能はあり得ない。

(二)  同1の(二)の主張はすべて争う。

(三)  同1の(三)の主張もすべて争う。

なお、本件転任命令が学年途中となったのは、高齢(七一歳)を理由に被申請人から昭和六一年三月三一日限り退職するよう勧奨を受けていた前付属高校長新川幸生が、これになかなか応じず、同月二九日に至りようやく同年四月末日をもって退職する旨応諾したことに伴うものであり、緊急やむを得ない措置というべきである。

2(一)  同2の(一)の主張はすべて争う。

(二)  同2の(二)の主張もすべて争う。

(1) 本件解雇の辞令書には理由が記載されていないが、懲戒手続の中で、懲戒委員会が申請人に対して審議の対象となった事由を告知し、申請人から顛末書を徴求しているから、懲戒事由については、申請人において当然了知されていたところである。

(2) また、懲戒委員会は、基本的事実についてすべて告知しており、右顛末書には、これに答える内容が記載されているのであるから、懲戒事由全体につき弁明の機会が十分に与えられていたものというべきである。

理由

一  申請の理由1の事実、申請人が本件解雇まで西高校長として被申請人から月額金六〇万六〇〇〇円の給与の支給を受けていたこと、申請人が顛末書を懲戒委員会に提出したこと及び被申請人に申請人主張の学長等選考規程が存在することは、いずれも当事者間に争いがない。

二  そこで、まず、本件転任命令前の申請人の地位につき判断する。

1  前示事実によれば、申請人が被申請人に対し雇用契約上の地位を有したことは明らかである。

2  申請人は、被申請人に対する関係において、法律及び被申請人の内部規程を根拠として、雇用契約上の地位のほか、準委任類似の性格の西高校長たる地位を有した旨主張するので検討する。

(一)  まず、申請人は、学校教育法が、校長職につき一般教員とは別個の職と定め(五〇条一項)、教育公務員特例法が、国公立学校の校長職への就任につき「採用」と定めている(一三条一項)ことをその根拠の一つとするが、学校教育法上の右規定は高等学校内部における職掌を定めたものに過ぎず、教育公務員特例法上の右規定も教育公務員たる校長の採用に関する規定であって、私立学校たる被申請人と申請人との間の契約関係の内容につき何ら規定するものでないことは明らかである。

(二)  次に、申請人は、被申請人の就業規則等の内部規程において、一般職員と学長、校長等とが区別して規定されていることをもその根拠とするので、被申請人の内部規程及び従前の運用状況についてみるに、疎明によれば、以下の事実が認められる。

(1) 被申請人の就業規則は、任用規程に定める手続により任用された常勤の教職員(教育職員、事務職員及び労務職員)に適用するとされ(二条一項)、同規則に定めるほか、教職員の就業に関する事項は別に定めるとし(一八条)、これに基づいて、任用規程、服務規程、解雇規程、制裁規程、給与規程等が定められている。そして、同規則及びこれに基づく諸規程以外に被申請人設置の各教育機関の長及び各大学の学部長(以下「学長等」という。)の就業に関する事項を定めた内部規程は存在しない。

また、同規則は、高等学校の教職員につき高等学校長を所属長とする旨定め(三条二号)、同規則及びこれに基づく任用規程、服務規程等は、所属長の権限につき規定しているが、同規則等の規定する所属長には、学長等のほか、各種学校長、図書館長、事務局長、更には理事長も含まれるとされている(三条)。

さらに、同規則は、被申請人が業務の都合により教職員の役職の任免を行なうことができ、教職員は正当な理由がない限りこれを拒むことができないと定め(五条一項)、役職の範囲、任期等については別に定める旨規定している(同条二項)。

(2) 前記任用規程は、教職員の任用に関する事項を定めることを目的とし(二条)、教育職員については、教授・助教授・講師・助手・教諭・助教諭等の職種に属すると定め(三条一項)、高等学校の教諭については高等学校教諭普通免許状を有する者の中から任用すると規定している(八条)。

(3) 被申請人の学長等選考規程は、各大学の学部長を含む学長等の選考時期、任命権者、選考基準、選考権者等につき定めており、高等学校長については、被申請人の教員の中から理事会が選考し(一〇条)、理事長が任命するものとし(三条)、任期は三年で、重任を妨げないと規定している(一一条)。

(4) 被申請人では、申請人の場合を含め、教職員から学長ないし高等学校長に任命するときには、辞令を交付するのみで、教職員についての退職手続も、退職金の支給も、また、学長等としての地位の内容を改めて取り決めることもなかった。

以上の事実によれば、被申請人では、就業規則及びこれに基づく諸規程以外、学長等の就業に関する事項を定めた内部規程のないこと、学長等選考規程は就業規則五条二項に基づく規程と解され、同規則では学長等も教職員の役職として取り扱われていること、同規程では、大学の学長や高校長も、大学学部長や幼稚園長と同列に扱われていること、一般教職員から学長や高校長へ任命される際、一般教職員としての退職手続も、学長等としての地位の取り決めも全く行なわれていなかったこと、同規則等における所属長に関する規定は、教職員の任用、服務等に関する各部署の長としての権限を定めたものに過ぎず、しかも、所属長には、理事長や事務局長も含まれ、学長等よりかなり広い概念であることが認められ、右事実からすると、被申請人における高校長たる地位は、申請人主張のような雇用契約上の地位から独立した準委任類似の法定独立職性を有するものと解する余地はなく、雇用契約上の地位である教職員の職務担当を定めた役職に過ぎず、就業規則等の適用が予定されたものと解するのが相当である。

したがって、申請人の前記主張は、到底採用できない。

三  次に、本件転任命令の効力につき判断する。

1  疎明によれば、抗弁1の(一)の事実が認められ、また、本件転任命令発令の理由については、疎明により、次の四点であったことが認められる。

(一)  申請人は、西高校長に就任して、既に六年余りとなり、長期間の在任になる。

(二)  付属高校は、施設設備に問題点があり、申請人の経験を生かして、施設設備の改善を図り、学力を向上させたい。

(三)  主静雄は県立高校長として豊富な経験と実力があり、西高校にとってもプラスになる。

(四)  申請人はとかくの噂があり、この際心機一転して、付属高校の発展のため努力させるとともに、本人の将来を期待したい。

2  申請人は、本件転任命令につき違法・無効である旨主張するので、以下、論点別に検討することとする。

(一)  申請人は、学長等選考規程一一条の高校長の任期に関する定めを根拠として、任期中は高校長としての地位が保障され、被申請人との信頼関係を継続し得ないような「やむを得ない事由」が生じた場合を除き、高校長としての地位の一方的解約は許されない旨主張する。

しかしながら、被申請人における高校長たる地位は、教職員の役職に過ぎないこと、高校長にも就業規則等の適用があり、右規則には、被申請人が業務の都合により教職員の役職の任免を行なうことができ、教職員は、正当な理由がない限りこれを拒むことができないとの規定があることは、いずれも前示のとおりであり、疎明によれば、学長等選考規程には、大学学部長についても任期の定めのあることが認められ、これらの点を考慮すると、右の任期に関する定めは、高校長としての地位保障を目的としたものではなく、高校長の在任期間がむやみに長期化して、人事が停滞することを防止することに主眼のある規定と解される。しかも、疎明によれば、被申請人においては、従前、学長等の任期満了に伴う再任手続が行なわれたことがなく、また、退任も、任期とは無関係に行なわれてきたことが認められる。

したがって、申請人の前記主張は、その前提を誤ったもので到底採用できない。

(二)  申請人は、学校教師の特別身分保障を前提として、教師の転任は、一般教員であると校長、教頭であるとを問わず、原則として、本人の希望又は承諾に基づくことを要し、意に反する転任は、本人の教育意欲が著しく弱まらないこと、本人及び現任校の計画的教育活動を過度に阻害しないこと、新任校からの強い希望等があること、事前に本人の意見、希望を十分徴して樹立した異動計画であることなどの条件を充たす必要がある旨主張する。

確かに、教員の転任は、教育現場への混乱を招き、生徒の教育に悪影響を及ぼすこともあり得ることから、できるだけ周到な人事配置計画に基づき、的確に人選を行ない、慎重に手続を進めることが望ましいことはいうまでもないが、本件のような私立高校長の場合、一般教員に比べ、直接生徒の教育に携わる機会が少なく、しかも、私学経営に直結する管理部門を担当し、経営に対する管理責任も非常に重いことから、その転任については、本人に著しい不利益をもたらしあるいは教育現場に多大の混乱を引き起こすおそれのない限り、経営者側に広い裁量権が認められるものと解するのが相当であり、申請人の前記主張は採用しない。

そこで、こうした観点から、本件転任命令の当否につき検討する。

(1) まず、本件転任人事の必要性についてみるに、本件転任命令発令の理由は、前示のとおりであるところ、前示事実に、疎明を総合すると、次の事実が認められる。

<1> 申請人は、被申請人の創立者である福原軍造の娘婿であり、公立高校教諭を経て、昭和四二年四月一日、被申請人の九州共立大学経済学部講師に就任し、以後、昭和四四年四月一日から同助教授、昭和四六年四月一日から同教授(昭和五三年一〇月一日からは同大学副学長を併任)、昭和五五年四月一日からは西高校長を歴任し、その間、昭和四四年一〇月一日からは被申請人事務局主事、昭和四六年一〇月一日から昭和六〇年四月一日までは被申請人事務局長をそれぞれ兼務してきた。

<2> 被申請人では、昭和五九年一一月、九州女子短期大学における大規模な不正経理が公となり、文部省から、同年一二月一九日付で、「適正を欠く学校法人の運営を行なったことにつき、関係者の責任を明確にし、社会的に信頼を得ることができるよう運営体制を刷新、確立する」ことなど指導を受け、対応策の報告を求められた。

そこで、被申請人は、理事全員の辞任、部外民間人をも含めた刷新委員会の設置、その指揮の下での新理事の選出等の運営体制の刷新、関係者の責任追及等の対応策をまとめ、昭和五九年一二月三一日付で文部大臣宛報告した。そして、昭和六〇年三月三一日、福原軍造理事長を含む理事全員が辞任する一方、翌四月一日、新しい理事が選任され、現在の理事会が構成されるに至った。

<3> 昭和六一年四日三〇日付で、付属高校長の新川幸生が退職することとなり、県立高校長経験者である主静雄の採用が内定した。

<4> 付属高校では、防音工事等施設設備の改善の必要性があったところ、申請人は、西高校長時代、高校長兼事務局長として、西高校の防音工事に関与しており、その経験が付属高校長としても生かせるものと期待された。

右認定事実によれば、申請人は、本件転任命令発令までに、西高校長としての在任期間が既に六年余りに達していたこと、昭和五九年一一月に公となり、文部省の指導を受けて、理事会全員退陣にまで発展した九州女子短期大学の不正経理については、申請人にも、少なくとも法人事務局長としての監督責任があるというべきこと、付属高校の施設設備の改善について、申請人の西高校における経験が生かせるものと期待されたことが認められるから、本件転任命令には、被申請人内部における人事の刷新並びに西高校長及び付属高校長への人材登用との観点から、被申請人の人事配置上、十分な必要性があったものということができる。

(2) 申請人は、本件転任命令には学校運営上の阻害性がある旨主張するので検討する。

<1> まず、学年途中での発令については、弁論の全趣旨により、付属高校の新川幸生前校長が昭和六一年二月ころからの退職勧奨になかなか応じなかったため、発令が学年途中までずれ込んだことが窺われ、やむを得なかったものといわざるを得ない。

<2> 次に、申請人及び西高校の計画的教育活動に対する阻害性についてみるに、疎明によれば、申請人が高校進学者の激減時に備えた長期的教育展望を持ち、その実践によって西高校の受験者を増やすなど、一応の実績を上げていたことが認められる。

しかし、校長の独創的な教育方針により受験者を集めるなど、学校の運営自体が校長の個性に依拠するような特段の場合を除き、私立高校長の職務は、教育実践の経験と管理能力を有するものであれば代替し得るものであり、申請人の作成した前記展望も、必ずしも申請人でなければ着想し実現できないような性格のものとも認められない。しかも、前認定のとおり、学長等選考規程によれば、西高校長の任期は三年とされているのであり、高校長の早期の交替が予定されていたものと解される。しかも、後に認定する申請人の行為に起因する混乱を除けば、本件転任命令の発令によって西高校の学校運営に具体的支障があったことを認めるに足りる疎明はない。

したがって、本件転任命令が、通常の高校長交替の場合に比して、西高校の教育活動に阻害をもたらしたものとは到底認められない。

<3> さらに、付属高校にとっての不都合についてみるに、前認定のとおり、申請人は、昭和四六年一〇月一日から昭和六〇年四月一日まで被申請人事務局長の職にあったから、付属高校の内部事情に通暁していたことは優に推認される。しかも、前認定事実に疎明を総合すると、申請人は、昭和三〇年四月から昭和三九年三月まで公立中学校の教諭を、同年四月から昭和四二年三月まで公立高校の教諭をそれぞれ経験し、昭和五五年四月以降西高校長を務めていたことが認められるから、共学を含め豊富な教育実践の経験を有するとともに、事務局長として付属高校の内部事情にも通じ、管理能力も兼ね備えた申請人の付属高校長就任については、申請人指摘の諸点を考慮しても、同高校にとり何ら不都合はなかったものというべきである。

<4> なお、申請人は、本件転任命令の申請人個人の教育意欲への悪影響を主張するが、右命令には、被申請人の人事配置上の十分な必要性があり、それ自体、西高校及び付属高校の教育活動を何ら阻害するものでなかったことは、前示のとおりであり、しかも、前認定事実に、疎明を総合すると、西高校が、被申請人の創立した学校の中では最も古い歴史を持つものの、被申請人が最初に創立した福原高等学院は女子高校であり、付属高校の系譜をたどれば同学院にまで至ること、付属高校の定員は一学年二九〇人で、西高校の一学年四〇〇人に比べても遜色のないこと、付属高校と西高校とは隣接し、通勤上の不便さは全くないこと、本件転任命令による待遇面での悪化はなかったことが認められる。そして、これらの事情に、前示のとおり、西高校長にも被申請人の就業規則の適用があり、右規則には、配転予定条項のあることも考慮すると、申請人は、右転任命令を受忍すべき義務があったものというべく、申請人の右主張は採用しない。

よって、学校運営上の阻害性に関する申請人の主張はすべて採用できない。

以上のとおり、本件転任命令は、被申請人の人事配置上十分な必要性があり、それ自体西高校及び付属高校の教育活動を何ら阻害するものでなく、しかも、申請人にとり著しく不利益を課するものでもないから、被申請人の裁量権の範囲内の行為と認められ、適法、かつ、有効な命令であったと認められる。

四  最後に、本件解雇の効力につき判断する。

1  疎明によれば、抗弁2の(一)ないし(三)の各事実がいずれも認められる。また、本件解雇の理由については、疎明及び弁論の全趣旨によって、申請人が、<1>付属高校長に命じる旨の被申請人の命令に従わず、<2>西高校長であると主張して、同高校の校長室に入室してこれを占拠しあるいは教員室内の校長用机に着席して、被申請人からの退去要請にも応じようとせず、被申請人の業務及び新たに着任した主静雄新校長の業務を妨害したものとして、制裁規程七条一号(故なく学園の業務上の指示、命令に服従せず、又は学園の秩序を乱した)及び一四号(故意に学園の業務又は他人の業務を妨げ、又は妨げようとした)に当たるとしたこと、処分決定の際、申請人が被申請人のキャンパス内に所有する土地(被申請人学園の通用門及び駐車場用地)につき本件転任命令発令後の昭和六一年五月二八日債権額金二億五〇〇〇万円の抵当権を設定し、次いで、同月二九日売買予約を原因とする所有権(共有者全員持分全部)移転請求権仮登記を経由したことも、事情として加味されたことが認められる。

2  申請人は、本件解雇につき、解雇事由の不存在及び手続上の瑕疵を理由に、違法・無効である旨主張するので、論点ごとに順次判断する。

(一)  申請人は、本件転任命令の違法・無効を前提に、解雇事由が存在しない旨主張するが、右命令が適法かつ有効な命令であったことは前示のとおりであるから、申請人の右主張は、その前提を誤ったものというべく到底採用できない。

(二)  次に、申請人は、本件解雇の手続上の瑕疵として、解雇の意思表示において処分理由が明らかにされておらず、しかも、懲戒事由のうち業務妨害行為については、何ら告知・弁明の機会が与えられていない旨主張する。

しかしながら、前示事実に疎明を総合すると、被申請人の懲戒委員会は、昭和六一年六月七日付書面をもって、申請人に対し、同人の本件転任命令に違反した赴任拒否及び職務命令違反並びにこれらに伴う付属高校の学校運営への重大な支障が、懲戒委員会の審議の対象となっており、同月九日までに、赴任拒否の理由に関する申立書(顛末書)の提出を求める旨通知し、これに対して、申請人は、書面により、本件転任命令に対する不服の理由を回答したことが認められ、右事実と前示の事実経過とを合わせ考えると、懲戒委員会における審議の対象が本件転任命令に違反する一切の行為であることは、同委員会発送の右書面の文面から容易に看取し得るところである。

したがって、本件懲戒手続においては、被処分者たる申請人に対して、懲戒事由のすべてにつき事前に十分な告知・弁明の機会が与えられたものと認められるから、申請人の右主張はすべて理由がない。

(三)  なお、被申請人が申請人によるキャンパス内の土地への抵当権設定登記を懲戒解雇の事情として加味したことについて、申請人は、右事情につき申請人に告知・弁明の機会が与えられず、このような事情まで考慮されるのは不明朗な処分であると主張するが、懲戒手続においては、懲戒事由の存否だけでなく、適正な懲戒処分の選択のため、懲戒事由以外の一切の事情も考慮し得ると解すべきところ、こうした諸般の事情まで被処分者に告知・弁明の機会を与える必要のないことはいうまでもないから、本件解雇につき何らの違法・不当な点も見出だし得ない。

よって、本件解雇の効力に関する申請人の主張はすべて理由がなく、本件解雇は適法かつ有効であると認められる。

五  以上の次第で、申請人の本件申請はその余の点につき判断するまでもなく失当であるからこれを却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 渕上勤 裁判官 中谷雄二郎 裁判官 井戸謙一)

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